2020年04月

「資本論まなぶ会」参加者との対話(4月は中止ですが)

 

資本論まなぶ会を中止にしたという連絡を参加者に入れました。思いがけなく、ほぼ全員から、返信がありました。さらに一人の参加者からは質問まで来ました。

 

「お世話になっております。3月29日の毎日新聞の書評欄の中で、伊藤光春氏の評で、『マルクスは多くの誤りを犯した。…「資本論」の論理矛盾を解くことが出来なかった、等々』。これはどういうことを言って言うのか、分かりませんので 説明してもらえればありがたいです。よろしくお願いします。」というものでした。

それに対し以下の返信をしました。

 

最近、資本主義の問題が深刻化しているからか、マルクスに言及する本が増えている気がします。しかし、それを正確に伝え、前向きに伝えるより、むしろ後ろ向きに伝えるものには、残念な気がしています。この本もその一つであり、評者の伊藤さんは、その流れに乗っておられ、残念な気がします。

「マルクスは多くの誤りを犯した。…スミス以来の労働価値説にこだわり、「資本論」の論理的矛盾を解くことが出来なかった」というのですが、むしろ、伊藤さんや、ヘルマンさん自身が、労働価値説に基づいて「論理矛盾を解くことが出来なかった」気がします。

資本論を一巻から三巻まで、その話の流れに沿って読むなら、三巻の利子が問題になっている箇所は、確かに、その流れが止まっています。しかし、それ以外は、ある意味スッキリとした流れになっており、最初の労働価値説から、最後の階級まで明らかになって、資本主義社会の階級的な性格を明らかにしていると思います。マルクス自身の言葉を借りるなら、①労働の二面的性格を明らかにしたこと②労賃の意味を明らかにし、その非合理的な形態を暴露したこと③地代、利潤、利子などを剰余価値として、一般的に明らかにしたことが、資本論の意義だと思います。

問題の「資本論」の論理矛盾といわれるものですが、いわゆる剰余価値と平均利潤との矛盾と言われるものです。しかし、その何処が矛盾しているというのでしょうか。

資本論の第一巻で、マルクスは、労働価値説に基づいて、労働力商品の価値と、その使用価値との違いに基づいて、搾取が行われていることを暴露しています。労働力商品の価値は、衣食住や教育に必要な物品を生産する労働時間によって決まり、労働力の使用価値は労働そのもので、その大きさは労働時間によって決まります。前者の労働時間より、後者の労働時間が長ければ、そこに搾取が発生し、剰余価値が生じます。

二巻、三巻に進むにしたがって、確かに、搾取や剰余価値とは違った「利潤」や「平均利潤」が問題になるのです。しかし、こうしたことを以って、本当に「「資本論」の論理矛盾」と言うのでしょうか。

この問題に絞って資本論を見るなら、三つの柱があると思います。一つは、資本論の一巻から三巻に至る全体の流れです。一巻は主に個別資本の立場から、如何に搾取が行われるかを明らかにしています。二巻では、個別資本が集まった社会全体において、再生産が如何に行われるかを見ています。そして第三巻では、資本が労働者から搾取した剰余価値が、地代、利子、利潤という、具体的な形で、地主、株主、資本家に配分される様子を描いています。

次は利潤とは何かという問題です。利潤は剰余価値とは違います。剰余価値は可変資本に対するものですが、利潤は、不変資本をも含めた資本全体に対する剰余価値です。

三番目は、平均利潤の意味を知ることです。それは社会的な総資本によって生産された剰余価値を、個別資本に振り分けるもので、その平均利潤と、個別資本が作り出した剰余価値とに違いが出る、と言えばその通りです。しかし社会全体で見るなら、そこに行きちがいはありません。詳しくは、資本論そのものをその流れに沿って、読み進めるなら確認できることだと思います。

ヘルマンさんや、伊藤さんが、バカになり切って、腹を据えて資本論に臨まれるなら、幸いです。ヘルマンさんの本を見たら、最後で、「資本主義は躍動感に満ちた社会だ」と言っておられます。その割には、資本主義社会に矛盾があることが許せないと言われます。おかしくないですか。躍動感に満ちた社会はいずれ死にいたる、と言うのが、むしろ自然だと思います。

 

これに対する返信が来ました。

「資本論についての返信、ありがとうございました。大変参考になります。第三巻までの大きな流れは大変示唆に富んでいます。こういう鳥瞰的な視野もいれて勉強を続けたいと思います。なかなか私には理解不能な事が多いですが。今、また商品から読み直しております。引き続きご指導、ヨロシクお願いします。」

2020年4月の「資本論まなぶ会」は中止します。

4月18日に、大東市のサーティーホールで行う予定でした。

しかし、今の状況で、会場が使えなくなりました。

他の会場を考えましたが、結果的には、今月は中止とします。

残念です。しかし、災い転じて福となしましょう。


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